とある日常の一幕

とある日常の一幕



※全てが捏造

※モブは悲惨

※ちょっと痛そうな描写あり







最近やけに奴隷が増えた。

特に共通点も無く、老若男女様々な人間がいつものように売られていく。どの顔も悲愴な面持ちで、この先の末路を察しているようだった。



「おはようオーガー、朝から熱心だな」

「ああ、バージェス。的が増えてな、これも鍛錬だ」


相変わらず驚く精度で、人を物言わぬ肉塊に変えていく。調子が良いのだろう、狙撃手の口元は歪んでいた。



「おやバージェス、今日はプロテイン飲まないのかい?」

「おうデボン‼さっきトレーニングを終えてな‼もう飲んだ後だ‼ウィ〜〜ハハハ‼」

「ムルンフッフフ、ストイックねぇ。あら、それ新しいささみのメニュー?」

「そうだぜ、良ければ教えようか?」

「助かるわ」


デボンは食の傾向が近いので、食事を共にすることが多い。時折筋肉に良さそうなメニューを交換するのも楽しみだった。


「御機嫌だな、良いことでもあったか?」

「ああ、最近コレクションが増えたのよ」



軽い足取りの女と離れ、外の空気に触れていく。ピサロの絶叫が聞こえた。


「ニャーーーーー‼⁉バージェス‼奴隷が逃げてる‼4時の方向ニャ‼」

「任せろぉ‼」


それなりの数がいたが、何とか全員捕まえる。分類があったようで山が2つになった。


「助かった、ありがとニャ。そっちの少ない山がおれのお気に入りの方で、後でお酌させてから売り飛ばそうと思ってたのニャ」

「あ〜〜…確かにお前好みの面が多いな」

「だろ?そっちの大きい山の方はお礼に好きにして良いニャ」

「要らないモノまで溜め込むなんてお前らしくないな、ピサロ」

「おれも名を上げたいからニャ〜。数も大事ニャ」

「そういうもんなのか」


良さそうな奴隷を見繕っていると、背後から唐突に気配がした。


「よぉ、好きにして良いならおれも少しばかり貰って良いか?」

「シリュウ‼お前には言ってないニャー‼」

「別に良いぞ?何に使うんだ?」

「フフ…試し斬りにちょうど良い」


ピサロの呆れ顔を無視して、奴隷の塊を抱えたシリュウを見送った。



歩いているとドクQが落ちていた。


「何してるんだお前」


船医の部屋に運ぶとベットにぶん投げる。溜め息をつくと、吐血しながら彼は言った。


「ゲホッ…少々遊び過ぎてな…ゴフッ」


よく見るとお手製のリンゴが殆ど無い。爆発に巻き込まれたか、単純に体力が尽きたのだろう。心を込めずにお大事にとだけ言って部屋を出る。ふと窓の外を見ると、巨大な手が手招きしていた。



「どうしたウルフ」

「ナイスタイミング、バージェス」

「なんだ?」

「この時間、この場所の昼寝最高だっつの」


腕を摘まれ窓から放り出される。デジャブを感じていると、彼の腹に着地した。


「今日は風も穏やか、理想的な状況っつの」

「ああ…これは確かに」


不思議と島の喧騒がいい子守唄になる。温もりを感じていると自然と意識が遠ざかった。



「んあ…ガッツリ寝ちまったな」


いつの間にか空は夕方になっている。未だ寝ているウルフを放置して建物に戻ると、既に出来あったバスコに遭遇した。


「飲まなくてええんか〜?」


手にはおれも好きなボトルが握られている。お言葉に甘えて酒を貰うことにした。










ハチノスの地下奥深く、ラフィットは笑顔を貼りつけて奴隷にした革命軍の爪を剥いでいた。


「これは完全にエゴなんですけど」


できるだけ痛みを伴うように、ゆっくりとゆっくりと器具を動かす。歯は抜いて舌も焼いているので声は出せない。


「おたくの参謀総長に苛立っておりまして」


剥ぐ爪も無くなり、胡乱げに針を刺していく。デボンとシリュウに教えて貰った1番苦しむ方法で肉を削ぐ。服に血が飛ぶが、今は気にしなくて良い。


「我々は真っ当な人間では無いですし、報復もある程度覚悟していますが」


眼窩に酸を流し込む。有機物の溶ける嫌な音がした。


「それはそれとして、仲間の重傷には腹が立つんですよ」


とどめにステッキで殴ると、虫の息になったソレを新たな総本部に届ける準備を始めた。








「よぉ〜〜船長!!一緒に飲もうぜ!!」


酒に酔い、普段より更に声の大きい操舵手に絡まれる。相当気分が良いのか、強引に腕を肩に回して部屋に連れて行かれた。


「ゼハハ、そんなに慌てなくても逃げやしねぇよ!!」


適当なツマミを用意して、夜通し呑み明かす。寝落ちたバージェスの傷跡をなぞると眉間に皺が寄った。







眩しい朝日が差し込み、目が覚める。そばにティーチが居ることに気づき、昨晩の醜態を思い出した。


「悪ぃ、船長!!酔った勢いで絡んじまった!!」

「構わねぇ、伝えたいことがあって一緒に呑んでたのもあるしな」

「伝えたいこと?」


悪辣な表情で船長が嗤う。こんな時はきっと愉しいことが起こる。





「お前にピッタリの悪魔の実、見つけたぜ」



その言葉を聞いて、おれは胸の高鳴りを抑えられなかった。

Report Page